家族

両親は私が大学を辞めたころに離婚した。
父は再婚し60歳にして再婚相手の方との間に子供を授かったが、予定日の半月前、つまりつい3日前の1月1日に流産で失ってしまった。
母は介護の仕事を始め1人でどうにか暮らしている。
高校を辞めてしばらく実家に住んでいた弟は、北参道で望みの仕事に就いて実家を出て行ったらしい。


私は大学を辞めた後、東京に出て、高級スーパーで日配品担当のアルバイトとして牛乳を並べながらやりたい事を考え、
2番目にやりたかった服を扱う仕事をしている。


父と母はそれぞれに優しかったが明らかに“人種”が違っていた。12月のゲレンデに滑りに行く人と「誰か」を探しに行く人がいるように。
愛の向きが違うということはそれに応える人がいないということだ。3人姉妹の末っ子には我慢ができなかった。
長男の私は我慢はできるが、愛を知りたかった。
28年間も生きている訳だから今さら人の所為にもできないが。


東京に出てしばらくは当時付き合っていた7歳年上の彼女の家に転がり込んでいたが、
一人暮らしをすべきというアドバイスに従って平成21年の11月から(6年間!)同じ場所に住んでいる。
20歳で大学を辞めたよくいる若者にとって身近にいる大人のアドバイスは生きていく上でとても重要で、今でも感謝している。
しかし私の頭の構造上、記憶はほとんど無いし、未練みたいなものは少しも無い。


すべては起こるべくして起こっている。
起こらない未来に気を配っても今が過ぎていってしまうし、起こらなかった過去はもはや存在しない。
今、ここに起こっているものごとを正面から受け取って大切にしたい。