いつの事だったか、ある空気の澄んだ暖かい日があった。天気のおかげで家の中に居ても気分が良かった。
仕事があったので家を出ると、朝から植木などの剪定をしていた男達が思い思いの場所で寝転んで休んでいた。

途端に僕は幸せな気分になった。出来ることなら彼らになりたいとも思った。こんな晴れの日の肉体労働の後の休息とは、いったいどんな感じのするものなんだろうか。
僕は彼らの幸せを心の内で祝福し、「ご苦労様です」と声をかけた。彼らはこちらを向いて、ただうなずいた。それで僕は満たされた。

アゲハチョウが高いところで舞っていた。僕は何としてもそれを手に入れたかった。一瞬、子供みたいだなと思ったが、すぐにそれとは違うのがわかった。
僕は手に入らない事がわかっていたから、欲しくなったのだ。

こんな事を思った日がいつだったか、あった。